【目的】本研究は、早産と関連する疾患を有する妊婦から採取した子宮内組織でのPorphyromonasgingivalis (Pg)の検出と、卵膜組織から分離培養したヒト絨毛膜由来細胞へのPg lipopolysaccharide(LPS)の影響の検討を目的とした。前年度は、Pgが子宮内組織に存在することを明らかにし、ヒト絨毛膜由来細胞の分離培養系の確立に至った。本年度は、前年度に確立したヒト絨毛膜由来細胞へのPgLPSの影響を検討した。 【材料および方法】正常妊娠妊婦の絨毛膜から絨毛膜由来細胞を分離培養した。分離した絨毛膜細胞、またはtoll like receptor(TLR)-2siRNAを導入しTLR-2の遺伝子発現を抑制した絨毛膜由来細胞をPg LPSで刺激した。その後RNAを抽出し、TLR-2とTLR-4の遺伝子発現をrea1-timePCR法を用いて解析した。さらに、各細胞の培養上清中のIL-6とIL-8レベルをELISA法にて分析した。 【結果および考察】絨毛膜由来細胞において、PgLPS刺激によりTLR-2の遺伝子発現が有意に上昇したが、TLR致4の遺伝子発現は有意な差は認められなかった。培養上清中のIL-6とIL-8レベルは、絨毛膜由来細胞においてPgLPS刺激により有意に上昇したが、TLR-2遺伝子の発現を抑制することにより減少した。以上の結果から、PgがTLR-2を介して、早産に関連する炎症性物質を誘導することにより、正常な妊娠維持機構の破綻をきたす可能性が示された。
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