現在、歯周病と心筋梗塞の関連について様々な報告がなされているが、臨床検査レベルで歯周病細菌が血栓を形成することを実証する技術の開発は遅れている。我々は、血管をモデル化するために流通チップ内に微小流路を作製し、それを用いてin vitroで細胞付着を観察するシステムを構築し、将来的に臨床診断に耐えうる機器の開発を進めてきた。平成21年度には、この微小流路における流路幅や障害物となるマイクロピラーの大きさ、位置等について比較検討した。また培養細胞(マウスマクロファージとヒト単球系細胞)を用いて、in vitroの流路系で一定時間5%CO_2存在下で培養できる実験観察系を構築した。その結果、微小流路での流通細胞の観察方法が確立できた。そして流路中にマイクロピラー(障害物)を設けることで、細胞がピラーに付着していく様相が観察できた。さらにブラック化の度合いはマクロファージをLPSにて活性化させると増加し、歯周病細菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansで感染させると減少することが定量的に評価できた。A.actinomycetemcomitansに感染したマウスマクロファージがG1期において細胞周期停止を起こすことが確認され、Oral Diseasesにおいて報告を行った。平成22年度にはLDL(Low Density Lipoprotein)添加等の高脂質環境下における細胞付着率を観察することにより、より生理的環境に近い状態で血栓形成のメカニズムの解明をめざす。
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