現在、歯周病と心筋梗塞の関連について様々な報告がなされているが、臨床検査レベルで歯周病細菌が血栓を形成することを実証する技術の開発は遅れている。我々は、血管をモデル化するために流通チップ内に微小流路を作製し、それを用いてin vitroでマクロファージ細胞の付着を観察するシステムを構築し、将来的に臨床診断に耐えうる機器の開発を進めてきた。平成22年度にはLDL (Low Density Lipoprotein)やHDL (High Density Lipoprotein)添加による高脂質環境下における細胞付着率を観察することにより、より生理的環境に近い状態で血栓形成のメカニズムを解明することに着手した。マウスマクロファージ細胞株RAW264.7にLDLまたはHDLを添加して培養し、その泡沫化をOil red O染色にて調べた。その結果、LDLやHDL添加によりRAW264.7細胞の生存活性に変化は生じなかった。また、LDL添加によりRAW264.7細胞の泡沫化の亢進が生じたが、HDL添加では起こらなかった。このことより、HDLではなくLDLがマクロファージを泡沫細胞へと変化させ、プラーク形成に関与している可能性が示唆された。また、今後は細胞表面における接着分子の発現に対するLDL添加の影響をWestern blotting法や免疫蛍光染色法などにより観察する予定である。また、歯周病細菌に感染させたマクロファージを本研究において微小流路に応用し、その付着率についても検討する。さらに北九州市立大学と協力し、研究のスピード化を図る。
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