研究概要 |
リゾリン脂質LPAが破骨細胞前駆細胞株Raw264.7の細胞増殖、並びに破骨細胞形成に与える影響を検討した。Raw264.7細胞からRNAを抽出し、RT-PCR法にてLPA受容体・LPA1,2,3,4の発現の有無を調べたところ、LPA1の発現のみを確認することができた。次に、LPAの細胞増殖に対する影響を評価するために、MTT assayを行ったが、LPA刺激による細胞増殖には有意な差を認めなかった。次に破骨細胞形成に対するLPAの影響を観察した。LPAは培養5日目、7日目では破骨細胞数に影響を与えなかったが、培養9日目においてLPA存在下の破骨細胞数は対象群と比較して有意に増加した。また、この破骨細胞数の増加はLPA受容体アンタゴニストKi16425により阻害された。このことから、LPAは破骨細胞の生存・apoptosisに関与している可能性が示唆された。次にリゾリン脂質LPAが歯肉上皮細胞株Ca9-22に与える影響を検討した。Ca9-22細胞からRNAを抽出し、RT-PCR法にてLPA受容体・LPA1,2,3,4の発現の有無を調べたところ、LPA1,3の発現を確認することができた。次に、LPAの細胞増殖に対する影響を評価するために、MTT assayを行った。その結果、LPA刺激により、細胞増殖が有意に亢進された。また、LPAの刺激により炎症性サイトカインの産生に変化がおきるか観察した。LPA刺激24時間後にRNAを回収し、炎症性サイトカインのmRNA発現を観察した結果、IL-6・IL-8の発現が増強していた。さらに、ELISA法を用いて上清中のIL-6並びにIL-8量を測定したところ、LPA刺激によりIL-6・IL-8がタンパク質レベルにおいても有意に増強していることが明らかになった。最後に、破骨細胞形成に必須な因子、RANKLのmRNA発現を確認したところ、LPAによりその発現が有意に増強された。以上の結果より、LPAは歯周組織において様々な生理活性を及ぼす可能性が示唆された。
|