研究概要 |
歯周炎におけるSirt1の機能、役割を調べるために、歯肉上皮細胞株Ca9-22にLPS(lipopolysaccharide)で処理し、Sirt1,Sirt2遺伝子の発現挙動を観察した。LPS処理によりSirt1,Sirt2の2RNA発現はコントロール群に比較して有意に減少した。また、LPS投与によりNF-kBの活性化を経て、Tumor Necrosis Factor alpha(TNFα)の産生が増強されることが知られている。歯肉上皮細胞においても同様な事象が生じるかを検討した。最初に、ELISA法にてTNF-αの産生量を測定した。LPS10μg/ml投与により、TNFα産生量は有意に増加した。次に、Ca9-22細胞にNF-kB lucをトランスフェクションし、そのルシフェラーゼ活性を測定することにより、NF-kBの転写活性を評価した。LPSにて刺激したところ、NF-kB転写活性はTNF-αと同様に有意に上昇した。このTNFα産生の増加にSirt分子が関与しているか否かを検証するために、Sirt1の阻害剤であるsirtinolを処理し、その効果を観察した。Sirtinolの添加により、LPSによって誘導されたTNFα産生の増加とNF-kBの転写活性の上昇が阻害された。以上のことより、LPSに誘導されるNF-kB活性化を介したTNF-αの産生増加はSirt1分子の発現低下によって生じている可能性が示唆された。今後、他の歯周組織構成細胞(破骨細胞や骨芽細胞など)においても同様な事象が生じるか検討する予定である。
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