研究概要 |
エナメルタンパク質のひとつであるエナメルシースプロテインは,主にエナメル質の小柱鞘の形成に係るタンパク質である。今までに,ブタエナメルシースプロテインがヒト歯根膜細胞(HPDL)細胞に対して細胞分化誘導能を持つということが報告されている。そこで本研究では、歯周組織再生療法への応用を目指してエナメルシースプロテインの合成ペプチドを数種類作製し,これらのHPDL細胞に対する細胞分化誘導能活性を調べた。 ヒトエナメルシースプロテインのC末端側アミノ酸配列から数種類のペプチドを合成し,これらの細胞分化誘導能をHPDL細胞が有するアルカリフォスファターゼ(ALP)活性の測定、リアルタイムPCRによる骨マーカー発現量の測定、石灰化誘導実験などを行って確認した。 その結果、エナメルシースプロテインのペプチドがヒトHPDL細胞のALP活性を誘導することが示された。数種類のペプチドの中でSDKPPKPELPGVDF(H-2)の配列が最も強いALP活性の誘導を示した。リアルタイムPCRの結果ではH-2をHPDL細胞に添加すると骨形成マーカーであるOPN、BSP,OCの遺伝子発現は、ペプチド未添加群よりも添加群の方が強いことが判明した。また培養28日目には石灰化ノジュールも認められた。このことからH-2は,HPDL細胞に対して硬組織形成誘導能を有している可能性が判明した。 今後,歯周組織再生治療薬として応用することを目的として動物実験をおこなっていく予定である。
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