本研究課題は、血管ではなくリンパ管に関する研究であり、自然免疫および獲得免疫に重要な役割を果たすToll様受容体を発現するリンパ管内皮細胞における免疫老化機構を解明することを目的とするものである。 <In vivoの検索> ・健常および炎症ヒト口腔組織(舌、歯肉、頬粘膜、歯髄、口蓋扁桃)毛細リンパ管に対して免疫組織学的検索を行い、以下の事柄を明らかにした。 1.老化マーカーであるp16INK4a、SA-β-Gal、Ki-67、ならびにBrdUを応用し、老化した口腔組織および老化していない口腔組織の識別が可能となった。 2.老化したヒト歯肉健常歯肉組織における毛細リンパ管ではTLR2の発現がほとんど認められなかった。一方、老化の有無に関わらずTLR4の発現は一定であった。 3.老化したヒト歯肉炎症組織におけるリンパ管ではTLR2およびTLR4の発現が認められなかった。 4.老化したヒト頬粘膜健常組織ではTLR6の強い発現が認められた。 <In vitroの検索> ・老化マーカーで選別された老化リンパ管内皮細胞を用い、以下の事柄を明らかにした。 1.培養ヒトリンパ管内皮細胞は、ある培養段階になると老化することが明らかとなった。 2.TLR4の発現は、老化していないリンパ管内皮細胞におけるTLR4の発現と同程度であり、機能的にも変化が認められなかった。 3.TLR2の発現は、老化していないリンパ管内皮細胞と比較して著しく低下し、機能的な低下も認められた。
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