研究概要 |
最終年度の平成22年度は,昨年同様昭和2年生まれの対象者に対して,平成15年度に行った調査で残存歯数が20本以上で,かつ平成15年度に簡易型ガスクロマトグラフィを用いて口腔内揮発性硫黄化合物(Volatile sulfur compounds,以下VSC)測定を行った100名のうち,調査参加の同意の得られた73名の自宅あるいは入所施設を訪問し,歯科検診および聞き取り調査を行った。そのうち,平成15年より今年度まで毎年歯科健診を受けた47名(うち,女性は16名)を分析対象とした。平成15年度のVSCデータとの関連を分析したが,硫化水素濃度(以下H_2S),メチルメルカプタン(以下CH_3SH)濃度,CH_3SH/H_2S比ともに歯周病進行歯数との有意な関連は認められなかった。一方,分析対象者の数が47名と少なくなったことを鑑みて,既にデータのある平成19年度までのデータとの再度層別化分析(対象者数95名)をおこなったところ,CH_3SH/H_2S比が0.5以上あるいはCH_3SHのみ単独で検出されたものは,H_2Sのみが検出されたものに比べて歯周病進行歯数が有意に高いことがわかった。以上より,口腔内揮発性硫黄化合物のうち,CH_3SHの多寡が歯周病進行に対して何らかの影響を及ぼしていることが推察された。本研究は,長期にわたる(5年以上)の歯周病進行に対する影響を検討することを目的としたが,観察期間が長期にわたった分,対象者の脱落が多く,十分な被験者数を得られなかった。今後は十分な被験者数を確保しうる研究モデルの設定を目指したいと考える。
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