研究概要 |
本研究は,歯周病によるアテローム性動脈硬化初期病変モデルラットを用いて,ビタミンCによる歯周病由来の動脈硬化初期病変の抑制機序を,酸化ストレスの観点から解明することを目的とした。 平成21年度では,歯周病によるアテローム性動脈硬化初期病変誘発モデルラット,ビタミンC投与ラットおよび対照ラットとの間にアテローム性動脈硬化の病変に差があるかどうかを検討した。大動脈では,アテローム性動脈硬化初期病変群において,動脈内膜に脂質の沈着がみられ,ヘキサノイルリジン(過酸化脂質),8-OHdG(酸化DNA損傷)およびナイトロチロシン(タンパク質の酸化)の値が対照群に比べて有意に高くなっていた。ビタミンC投与群では脂質の沈着が減少し,ヘキサノイルリジン,8-OHdGおよびナイトロチロシンの値がアテローム性動脈硬化初期病変群に比べて有意に低くなっていた。 平成22年度は,平成21年度に採取した遺伝子を用いてPCRアレイ解析を行った。アテローム性動脈硬化初期病変群に比べてビタミンC投与群では,84遺伝子中22遺伝子が4倍以上増加しており,1遺伝子が4倍減少していた。変化した遺伝子群には,酸化ストレス関連としてnitric oxide synthases 2と3(酸化ストレス関連),アテローム性動脈硬化関連としてIntegrin beta 3・integrin alpha 5・integrin alpha V・procollagen type XVIII alpha 1・bc12-like 1・annexin A5・transforming growth factor beta 1・platelet/endothelial cell adhesion moleculeが含まれていた。ビタミンC投与は,これらの遺伝子に影響を与えることにより,動脈の酸化ダメージの減少および脂質の沈着の減少につながった可能性がある。
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