研究概要 |
肺癌の加療のために徳島大学病院に入院中の患者のうち,1コース目の化学療法を予定している15歳から68歳までの9名(男性7名,女性2名,年齢56.8±16.4歳,現在歯数14.2±10.8本)を被験者とした。安静時唾液を採取し,蒸留水で100倍希釈したものを唾液サンプルとした。綿棒にて舌背後方部または咽頭後壁を擦過し,10mlの蒸留水に懸濁したものをそれぞれ舌苔,咽頭サンプルとした。細菌カウンタ(パナソニック四国エレクトロニクス)を用いてこれらのサンプルに含まれる細菌数を測定した。残りは,さらに10倍希釈し,コロニーカウントを行った。コロニーカウントと細菌カウンタによる測定値を比較した結果,これらの間に有意な正の相関(r=0.74,p<0.01,n=48)が示された。検体採取は,化学療法1コース目の施行前後に2回行った。細菌カウンタ測定値と,化学療法中の血中CRP最高値,抗菌薬投与の有無,ならびに口腔内症状の有無との関連性について検討を行った〔当院臨床研究倫理審査委員会により承認(631)〕。その結果,化学療法開始時の咽頭細菌数と,化学療法中の血中CRP最高値との間に有意な正の相関が示された(r=0.82,p=0.02,n=7)。また,化学療法中に抗菌薬投与を受けたか否かで被験者を群分けしたところ,抗菌薬投与を受けた2名の化学療法開始時の咽頭細菌数は(7.66±1.31)×10^7cell/mlであり,抗菌薬投与を受けなかった5名〔(2.61±2.02)×10^7cell/ml〕に比べ,有意に高い値を示した。さらに,化学療法中に口腔内症状を認めたか否かで被験者を群分けしたところ,口腔内症状を認めた5名の化学療法開始時の咽頭細菌数は(5.16±2.81)×10^7cell/mlであり,口腔内症状を認めなかった2名〔(1.27±1.10)×10^7cell/ml〕に比べ,有意に高い値を示した。化学療法中に口腔ケアを行い,この前後に採取した検体に含まれる細菌数を比較した結果,化学療法施行後の唾液中細菌数は(4.77±340)×10^7cell/mlであり,化学療法開始時〔(6.93±7.19)×10^8cell/ml〕に比べ,有意に低い値を示した。
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