歯周病原性細菌の一つであるF.nucleatumは、揮発性硫化物(VSC)などの口臭原因物質を産生する一方で、早期定着細菌および後期定着細菌の両方に対する菌体表層レセプターを持ち、菌体間凝集の中心となる細菌であり、本研究では、F.nucleatumと他菌体との共凝集によるF.nucleatumのVSC産生への影響を明らかにすることを目的とした研究を行う。平成21年度にはF.nucleatum単体で培養、もしくはP.gingivalisあるいはS.intermediusと共培養し、産生されるVSC濃度を測定した。その結果、F.nucleatumとP.gingivalisには凝集が見られ、共培養した場合には単体培養のF.nucleatumあるいはP.gingivalisにおけるVSC産生よりも増強する傾向にあることを確認した。この結果を基に、本年度は、共培養F.nucleatumおよび単体培養F.nucleatumにおけるF.nucleatumのVSC産生に関する酵素である、L-methionine-α-deamino-γ-mercaptomethan-lyase(METase)およびL-cycteine desulfhydraseの遺伝子発現をRT-PCRで確認した。P.gingivalisの培養上清、あるいは熱処理により死菌体としたもの、そしてP.gingivalisの生菌体をそれぞれF.nucleatumに添加し、培養を行い、F.nucleatumのVSC産生に関する酵素の遺伝子発現と菌の産生するVSCを測定し、F.nucleatum単体培養のものとの比較を行ったところ、P.gingivalisの生菌体を添加して培養した場合に硫化水素の産生量が増加し、L-cycteine desulfhydraseの遺伝子発現が有意ではなかったが増弾している傾向にあることが示された。
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