【目的】歯周炎患者を対象に、血管内皮機能の測定と同時に、心血管イベントとの関連がごく最近になり報告された新しい血清マーカー等を測定することにより、歯周炎における早期動脈硬化病変のスクリーニングに役立つマーカーを発見し、更には心血管イベントの新たな予測因子について検討する。また、最近になり動脈硬化の危険因子との関連が注目されている心臓弁膜病変と、歯周炎の重症度との関与についても未だ報告がないので、同時に検討する。 【方法】本院歯周治療科にて中等症および重症の歯周炎と診断された患者を、治療(T)群と対象(C)群に振り分ける。治療群には、プラークコントロール、スケーリング、およびルートプレーニングを中心とした歯周基本治療を全顎に対して数回に分けて行う。治療前および治療終了直後と数ヶ月後の計3回、炎症ないし酸化ストレスマーカーなどの血中濃度の測定、内皮機能検査(FMD)を含めた血管超音波および心臓超音波検査を行う。 【結果】C群7名およびT群17名を本年度中にエントリーした。治療前のFMDを用いた血管機能検査では、C群に比べT群のFMDの低下が認められ、T群では心臓弁膜の輝度増強や肥厚が多く認められた。またT群の一部では、歯周治療終了直後にFMDの改善が認められている。血中マーカーに関しては、炎症マーカーや接着因子、骨代謝関連因子のosteoprotegerin、アディポサイトカインなど10項目あまりの測定を開始しているが、歯周治療の前後で変化が認められている。 【結論】中等症および重症の歯周炎の患者を対象にした歯周基本治療により、血管機能の改善が認められ、血液中の炎症マーカーや動脈硬化関連因子が関与している可能性が示唆された。今後、さらに症例数を追加しつつ検討を行い、3回目の治療終了数ヶ月後の検査値とあわせ、統計学的検討を行う予定である。
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