《研究の概要と目的》本研究の目的は、看護師の患者指導スキルの実態を、看護学教育に従事する高等学校教諭の指導スキルとの比較において明らかにすること及び、看護師の患者指導スキルを教育学分野における教授スキル分析の視点を取り入れ定量的に分析し、指導スキルの新規の定量的評価ツール開発への基礎資料を得ることである。本年度の計画は、現職看護師による模擬患者指導の実施及び、看護師の指導スキルの定量的分析と分析結果の看護学教育に携わる教員による評価結果との照合である。《結果》対象者はA市内の病院に勤務する看護師4名、模擬患者としてはB大学看護学専攻学生6~9名。評価者としてB大学看護学専攻教員11名である。模擬患者指導は1回約30分間として2回実施し、1回目の実施後には指導実施看護師と看護学教育に携わる大学教員、病院の教育担当看護部職員が参加してフリートーキングを行い、改善点についてのディスカッションを実施した。各回の指導場面をVTR撮影した。評価の視点としては、心理学領域および教育学領域での知見を参考に研究者が独自に作成したスキルアップチェックシートを用いた。評価は、大学教員が各自VTRを再生して実施した。評価項目の信頼性を検討するため、クロンバックのα係数を算出した。看護師1名の1回目を除き、α係数は0.81~0.94となり高い信頼性が得られた。看護師1名の1回目については、3項目を除外することでα係数の上昇が認められた。これら3項目の内容を精査したところ、類似した質問項目となっており、評価者によって判定基準が曖昧であるためより定量的な質問標記が必要であると判断された。《今後の課題》今後はより精選した評価表を用いて評価し、行動解析装置を用いた定量的分析を加え対応を検討することで評価ツールとしての精度を向上させる。
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