本研究の目的は、看護師の勤務体制を、疲労感、精神的健康度、睡眠の質、日中の眠気などの看護師自身の健康面に加え、看護師のワークパフォーマンス、インシデントといった患者ケアの質に関する看護業務の面から評価することである。本年度は、2つの大学病院において交替制勤務に従事する看護師を対象に質問票調査(ベースライン調査票と2週間の睡眠・勤務日誌)を実施した。三交替(8-8-8h)、二交替(8-16h)以外の勤務体系をとっている者、調査開始時点で勤務体制を変更してから1ヶ月を経過していない者は対象から除外した。対象となった1577人に調査票を配布し、1042人(66.1%)より回答が得られた。対象者のうち、対象者の約7割が二交替勤務であった。インシデント・アクシデントは、調査期間中に40%程度の対象者が経験していた。二交替勤務に従事している看護師と三交替勤務に従事している看護師で、インシデント・アクシデントの発生率に有意な差はなかった。また、チャルダー疲労質問票により測定した身体的疲労度、精神的疲労度についても、二交替勤務に従事している看護師と三交替勤務に従事している看護師で有意な差はなかった。 二交替勤務と三交替勤務に従事している看護師において、インシデントと疲労度の比較した結果、勤務体制による違いは見られなかった。しかしながら、重大なアクシデントは観察されていないものの、約40%がインシデントを報告していた。勤務体制による違いはないものの、個人の睡眠のとり方、休息のとり方とインシデントの発生についてより詳細な検討が必要である。
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