本研究は看護学教育に関わる教員と臨床指導者(以下、指導者)が、臨地実習指導にて学生に行う教材化の内容、教材化していく過程を検討することである。本年度は、昨年度実施した調査データの分析を進め、教員、指導者の教育実践記述からその特徴を検討した。以下、結果の一部を提示する。 I教員事例:実習期間中、後計4回の面接結果を分析。教員の語りには様々な場面が存在したが、「学生なりの考えをまず知る」事を起点とし、患者の存在を意識させ、学生の考える視点に広がりを見出せるよう指導がなされていた。また学生に「患者の変化や状況を問う」ことで、学生の患者理解の状況を把握しつつ、[対象理解の能力の獲得、患者への関心から看護が展開されることの意識化を図る]実践である点を特徴として捉えた。 II指導者事例:実習の参加観察(4日)面接結果(3回)を分析。指導者は「学生が自ら看護を発見してほしい」との願いをもち、指導者が捉える「患者情報を示す」「挑戦してよいことを保証する」等から、学生が患者と関わる中で、自らの看護を見出していくための支援を行っていた。また学生の考える看護を支持し、学生の思い描く看護を実現させていた。そして、学生が受け持つ前後の「患者の変化を伝える」ことで学生の看護の価値を見出すことにつなげていた。本事例は[学生の考える看護実践を後押しする]ことで[自らの看護を創り出す思考を育て看護を実践する喜びを実感]させていた点を特徴として捉えた。 看護学実習教育の充実は、学生の看護実践能力向上を実現させる上で重要であるが、その実態は未だ十分明らかではない。本研究の特徴は、事例数は少ないものの実習経過に沿って教員・指導者にデータ収集を行い実際の実習場面から検討した点にあり、本研究結果は、看護実習教育を検討する一助になると考える。また、本調査結果は今後の臨床実習指導者育成、FD教育にも活用することが期待される。
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