本研究の目的は、21-23年度にかけて倫理コンサルタントが、研修指導医、専門・認定看護師及び看護管理者、ある症例における倫理的な問題の認識及び異なる専門的な視点について明らかにすることである。そのために、21年度は以下、3つの調査を行った。一つ目は、倫理コンサルタントが、症例に関する助言の内容(価値判断)を検討する際に、彼らの助言を基礎づける彼らの視点を明らかにすることとした。また、来年度から臨床指導医、認定・専門看護師らの同様の価値判断と比較するため、本来看護師が有する看護実践における価値判断と医療専門職を目指す学生が有する医療専門職の価値判断を検討した。 (1) については、国内において倫理コンサルテーションを実践している者に質問紙調査を行い、現在データ収集中である。 (2) については、洗髪という清潔ケアにおける看護師の判断の過程についてインタビュー調査を行い、看護師は患者の病態の安全と生活や生理的欲求としての清潔の保持を前提に患者の希望を尊重して行っていることが明らかとなった。 (3) については、医学、看護、作業療法、理学療法、臨床検査、薬学の1年生が、各専門職として患者の治療判断を検討した時、どのような判断をするのか調査した。専攻別、治療の是非についてX二乗検定(ボンフェロー二の修正)を行った。結果、学生の専攻と治療の是非に関する判断について、看護学生は医学生、その他に比べて統計的に有意な差があった。看護学生は他の群の学生に比べて、治療しない傾向にあったといえる。 委譲の調査の結果から、看護師は、患者への看護実践について身体の安全と患者の希望を重んじて看護実践していること、専門知識がない学生においても、職業が有する価値を重んじて判断する傾向にある、という点が推察された。22年度は、上記の調査結果及び推察を基に、倫理コンサルタント、上級医師、上級看護師の価値判断を検討する。
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