本研究の目的は倫理コンサルタント、医療専門職による倫理的問題の認識及び価値判への影響について明らかにすることである。23年度に修正を要したため、24年度の実績報告として報告する。 ①22年4月のAll Together Better Health 5(オーストラリア)で発表した結果を基に質問紙を作成した。医学科、保健学科、薬学部在籍の1年生と4年生を対象にダックス・コワート事例(視聴覚教材)に対する治療判断を調査した。結果、1年生は4年生と比較して治療の是非、治療行動の有無に関して有意に治療すると回答した(p<0.05)。学年で治療に対する判断が異なることが明らかとなった。倫理的問題の認識は、両郡とも「患者の意向に沿わないことは患者にとって善いことか悪いことか」(1年生=240、4年生=210)が最も多く、ついで「患者の意向に反しても生命の維持をすることは医療従事者の義務か否か」(1年生=201、4年生=174)、「生命維持は患者にとって善いことか悪いことか」(1年生=164、4年生=127)であった。 ②臨床倫理の専門家である倫理コンサルタント(EC)群と、非倫理コンサルタント(Non-EC)群(上級看護師、臨床指導医、倫理学者)を対象に仮想事例(アルツハイマー病高齢者の栄養療法の是非)を用いて質的研究を行った。EC群は治療の是非を患者の直接的な利益、害悪評価から判断し、Non-EC群は患者および家族の利益・害悪評価から判断していた。また、仮想事例が典型事例ということができるのか、倫理コンサルテーションで扱った実績症例を分析し検討を行った。実績症例の特徴から仮想事例は、1) 患者の判断能力が不明確であること、2)患者の意向が不明であること、3)代理判断者の適正に関する問題、4)病態が終末期であるかどうかという点において、典型的な倫理的問題を含む事例であると言うことができた。
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