研究概要 |
本研究は,中堅看護師の果たすべき役割やその意義とはどのようなものなのかを明確にするとともに,中堅看護師の就業継続に向け管理者に必要とされる支援を提案することを目的としている. 平成23年度は,二つの内容を実施した.まず一点目として収集したデータ内容の見直しを行い,二点目として,その内容をもとに「(仮)中堅看護師・対応支援マニュアル」の項目立てを行ったことである.一点目である,管理者,若手看護師が認識している中堅看護師の役割内容について分析を進めた結果,明らかになったことが幾つかあった.管理者,若手看護師ともに,中堅看護師を臨床現場における実践モデルとしてとらえ,必要に応じて情報の提供を受けていた.管理者は,おもに病棟スタッフに関する情報提供を中堅看護師から受け活用していた.若手看護師は,自身のケアの不足部分や知識の欠落している部分について,中堅看護師が持っている経験知からくる知識提供を受け,ケアの向上に反映させていた.そして,管理者,若手看護師ともに,病棟にいる中堅看護師個々の得意とする内容をそれぞれ見極め,必要な情報・知識を提供してもらう際には,得意とする中堅看護師を選択して動いていることが明らかになった.管理者が,中堅看護師に対して選択的に対応することは想定していたが,若手看護師においても,話しやすさ・聞きやすさの要件以外に,自身のききたい答えを持っている中堅看護師を見極めて動くという立ち回りができていたことが明らかになった.このことは,若手看護師ら周囲のスタッフが,個々の中堅看護師が持っている実践能力を管理者以上に理解している可能性があることを示している.これらの点を,二点目として取り組んだ「(仮)中堅看護師・対応支援マニュアル」の項目立てに反映させた.マニュアルの具体的内容については,今年度詰めて完成版を作成する.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題に取り組むことで,現場にいるスタッフらの観察力やそこに存在する組織文化といったものが,看護チームを動かすうえで大きな力になっていることがみえてきた.本研究の課題として,中堅看護師の就業継続を目指すため,管理者に必要とされる支援に焦点をあてているが,管理者だけでなく周囲にいるスタッフの認識や,そこにある習慣・文化といったものにも目を向けて可能な限り意義ある支援内容が提案できるよう研究を進めていきたいと考えている.
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