研究概要 |
【目的】看護実践能力を向上させるために看護実践を量的・質的に分析し,看護実践能力の異なる新人看護師から達人看護師までの各段階におけるReflectionの実態と熟達化の関係性について検討する.【研究方法】看護師650名を対象に平成21年8月~9月まで無記名自記式の質問紙調査を行った.質問紙項目はReflectionの実態を明らかにするために必要な内容を吟味し西村(1995)の「自己教育力測定尺度」を採用した.本研究を行うにあたり福岡県立大学研究倫理委員会の承認を得た.質問紙は直接郵送法にて365名分を回収し分析対象とした.分析は経験年数を5群に分類し分散分析と重回帰分析を行った.【結果・考察】研究仮説を「看護実践の経験を積み重ねるほど自己教育力は高まる」と立て分析したが,結果は,看護実践の経験を拠所とすることなく,どの経験年数の段階にある看護師も,自己教育力の4側面のうち「I.成長・発展への志向」(16.79±1.89)と「II.自己の対象化と統制」(16.42±1.57)が高く,「III.学習の技能と基盤」(14.92±2.21)と「IV.自信・プライド・安定性」(14.41±2.25)が低いという興味深い結果が得られた.また,自己教育力の4側面の関係性は,I側面とII側面(P=.009),I側面とIII側面(P<.0005),II側面とIII側面(P<.0005),IV側面とI側面(P=.006),IV側面とIII側面(P<.0005)に関係性がみられた.しかし,経験年数の違いによる特徴的な相違はみられず,看護実践の経験を積み重ねることによって自己教育力が高まることに繋がっていかない臨床現場の現状が明らかとなった.今後,看護師の自己教育力を高めるためには「本質を見抜く深い振り返り」が重要であり,Reflectionとの関係性を示唆する結果が得られたので,さらに質的な分析を加えて検討していく.
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