片山が行った、これまでの調査から得られている「感情労働のプロセス」のモデルをもとに、さらに理論的サンプリングを行い、病棟勤務看護師が実際に行っている様々な感情労働のパターンを質的に抽出し、感情労働のプロセスを表すカテゴリーを見出すために、理論的飽和に至ることを目的として、11名の中堅以上の病棟勤務看護師を対象に面接調査を実施した。その結果、【情の交流の表層レベル】【自己の看護に対する違和感】【現実とのズレに伴う葛藤と混乱】【既成の社会的役割からの脱却】【情の交流の深層レベル】【特化された社会的役割の獲得】【体験の意味の創造】【職業観の変容】【経験的知識の再編成】の9つのカテゴリーが明らかとなった。また、本年度の結果から、中堅レベルに達したばかりの看護師の感情労働には特徴的なパターンが存在していた。それは、感情労働を繰り返す中で自己成長していく看護師がいるのに対して、ストレスフルな状況下におかれている者や、離職を考えている者がいた点である。そこで、ある程度の経験を積んだ後に臨床を退いた看護師をサンプリングし面接調査を行った。その結果、臨床で看護師を続けている者に比べ、【体験の意味の創造】が行われておらず、【職業観の変容】、【経験的知識の再編成】に至っていない感情労働のパターンが明らかとなった。そこで、来年度は、新人看護師をサンプリングし、縦断的に面接を行い、【体験の意味の創造】に至る過程において欠けている要因を引き続き検討し、量的研究に耐えうるモデル形成を目指すこととする。なお、これら今年度の結果は、第29回看護科学学会(2009.11)、第16回ヘルスカウンセリング学会(2009.9)で発表した。また、研究成果の投稿を予定している。
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