昨年の研究結果から、新人看護師が実際に行っているさまざまな感情労働のパターンを明らかにし、感情労働のプロセスを表す新たなカテゴリーを見出すこと、またそれらカテゴリー間の因果関係の検討を行い、量的研究に耐えうるモデル形成を行うことが目的であった。そこで、これまでの理論的サンプリングで不十分であった、新人看護師10名に対し面接調査を実施した。その結果、患者・看護師関係において入職3ヵ月目までに何度も中堅以上の看護師同様感情労働を経験しており、この経験から「看護師としての自覚」「これからの看護師としての期待感」「学習への動機」を高めていた。また「感謝されることへの喜び」「早くできるようになりたい焦り」「できない自分に対する怒り」「自分の看護を表現しきれなかった反省」といった影響をうけ、自己研鑽に励む、同期の看護師と話す、上司に相談する、経験のある看護師から教えを請うなどしていた。一方で、「責任の重圧」「自分の未熟さに対する不安」「コントロールしきれない感情の揺さぶられ」によって看護師として続けていくことに不安を抱えている者や、今の配属先で続けることに不安を感じている者もいた。これらは、中堅以上の看護師を対象とした、研究結果で明らかにしてきた、9つのカテゴリーからなる感情労働のプロセスである【情の交流の表層レベル】【自己の看護に対する違和感】【現実とのズレに伴う葛藤と混乱】【既成の社会的役割からの脱却】【情の交流の深層レベル】【特化された社会的役割の獲得】【体験の意味の創造】【職業観の変容】【経験的知識の再編成】の、特に【現実とのズレに伴う葛藤と混乱】の段階において影響があることが明らかとなった。つまり、感情労働のプロセスを表すカテゴリーは9つであり、それらカテゴリー間の関係は循環プロセスになっていた。また、プロセスが循環するために様々な因子が影響していることが確認された。
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