1.研究目的:脳卒中による右大脳半球の損傷部位と広がりを判断した上で、対象者とその周囲の人々(看護師、リハビリ技師、家族)との間のコミュニケーションの実際を照らし合わせて疾患別、損傷部位別、身体要因別(身体麻痺、ADL)、「無視症候群」の階層レベル毎に解析した。 2.これまでの研究成果 (1)対象の概要:対象は計6名、年齢は平均63.8歳、全て初発で脳梗塞3名、脳内出血3名であった。また損傷部位は左大脳病変がなく、基底核病変は3名あった。認知機能はMWSE24点以上の高得点群が5名だった。身体要因はFIM低得点群が4名おり全介助レベルだった。(2)無視症候群の階層:右大脳半球損傷患者行動チェックリストにおいて各項目の計36項目中該当数、2~3項目を軽度(3名)、7項目を中等度(1名)、16~20項目を重度(2名)と分類した。(3)右大脳半球病変別にみたコミュニケーションの課題:(1)側頭葉&頭頂葉は【わからない】、(2)前頭葉&大脳基底核は【意思表示が強い、主張的、感情的】、(3)大脳基底核は【感情のコントロールが利かない、うつ的】、(4)前頭葉は【周りとの調和がとれない】、(5)海馬は【記憶がない、想い出せない、想起できない】という症状がみられた。(4)FIM低得点群のコミュニケーションパターン:日常生活動作が著しく低下した対象者は、a.言語的メッセージとメタコミュニケーションの不一致、b.非言語的メッセージ、c.無言で一方的なパターン、d.自己防衛的パターンという特徴がみられた。【考察】右大脳半病変別にみて、損傷した大脳がつかさどる脳機能がコミュニケーションに影響を与えていた。また、FIM低得点群には、無言で一方的なパターンや自己防衛的パターンなど特徴的なパターンがみられ、これらは注目すべき特徴である。 3.今後の研究課題第1に対象数を重ね比較検討していくこと、第2に無視症候群の階層レベルごとの解析を行うこと、第3に看護アプローチ方法の検討を行うことが課題である。
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