1.研究目的:脳卒中による右大脳半球の損傷部位と広がりを判断した上で、右大脳半球損傷患者と医療者間のコミュニケーションの場面をデータとし、コミュニケーションの5つの構成要素「送り手」「受け手」「メッセージ」「フィードバック」「背景(時間・関係)」に分類し再構成を行い、右大脳半球損傷患者におけるコミュニケーション課題と看護師の調整役割を明らかにする。 2.これまでの研究成果 (1)対象の概要:「送り手」となる患者は平均年齢63.8歳、全て初発で脳梗塞3名、脳内出血3名の計6名、損傷部位は左大脳病変がなく、基底核病変は3名あった。認知機能はMMSE24点以上の高得点群が5名、身体要因はFIM低得点群が3名だった。また「受け手」となる医療者は看護師、看護助手、リハビリテーション技士であった。 (2)右大脳半球損傷患者におけるコミュニケーションの課題:「送り手(患者)」と「受け手(医療者)」間のコミュニケーション場面を5つ構成要素に分類し再構成を行った結果、以下のような課題が明らかとなった。(1)患者と医療者間で高次脳機能の評価が異なる場合、「メッセージ」と「フィードバック」が噛み合わないという現象が生じた。(2)逆に患者が「受け手」となった場合は、右大脳機能による現状認識の欠如した状況があり、「フィードバック」を受け取れていなかった。また、(3)患者に再生能力の低下した場合、病棟生活や訓練において学習力低下は避けられないため、医療者優位のコミュニケーションに陥りやすかった。 (3)今後の研究課題:事例によって右大脳半球損傷患者におけるコミュニケーションの課題に関して、具体的な仮説を導くことができた。今後は、他の研究結果や実験事例と照らし合わせて繰り返し検証し、妥当性確認作業を累積して法則的な理論化へ高めることが課題である。
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