今年度は、ホルモン療法を受ける前立腺がん患者の倦怠感・身体的特徴について調査する予定であったが、計画通りに調査を開始することができなかった。今後の計画に先立ち、ホルモン療法をうける前立腺がん患者に対する運動療法による介入を行った文献について検討した。日本における研究については、医学中央雑誌にてキーワードを「前立腺がん」and「運動療法」で検索される原著論文は3件であり、そのうち、ホルモン療法をうける患者に対する運動療法を行ったものは2009年発行の1件であった。内容は、レジスタンストレーニング(全身の筋力トレーニング)を20週間したというものであった。海外における研究については、PubMedにてキーワードを「prostate cancer」and(「androgen suppression」or「Androgen deprivation」)and「exercise」として検索したところ、48件の文献が抽出された。そのうち、ホルモン療法をうける前立腺がん患者の運動療法をおこなった文献は、2003年以降に報告されており、7件であった。運動の内容は、レジスタンスエクササイズ、エアロビクスなどであり、ウォーキングなどの緩やかな運動を行った調査はみられなかった。介入期間は、12週間~1年間とさまざまであり、介入による筋肉量・体組成は介入前に比べ改善していることを示し、PSAや血液生化学の結果から介入期間中のがんの悪化はみられなかった。また、倦怠感の変化について調査したものが5件であり、いずれも倦怠感の減少を示唆していた。どの文献でも、積極的な筋力トレーニングが実施されていた。前立腺がん患者におけるホルモン療法では、肥満(脂肪の増大)や骨粗鬆症などの副作用もあることから、倦怠感だけではなく、それらの副作用を最小限にとどめるような運動療法としても考える必要がある。これらを踏まえて、普段の生活のなかで実施できる運動プログラムを検討していく必要があると考えた。
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