平成23年度は、ホルモン療法を受ける前立腺がん患者の身体的特徴、倦怠感の特徴、身体的変化と倦怠感との関連を明らかにしたうえで、前立腺がん患者のための運動プログラムを検討し、対象となる患者に対して、運動プログラムを実施し評価を行う予定であったが、対象者が得られず、評価が行えていない。運動プログラムを作成するにあたり、患者の身体的変化を明らかにし、その要因について検討した。 1)対象者の運動習慣については、対象者のほとんどは60歳以上であり、農業などの肉体労働以外の運動習慣があると答えた者はわずかに1割であった。これは高齢であることや既往歴、排尿機能の低下などのために活動性の低下し、運動を行っていないことが考えられる。運動習慣がある者は、主にウォーキングを行っていたが、歩数は平均して1日5000歩以下で少なかった。 2)ホルモン治療期間に関わらず、3~6ヶ月間の間に体脂肪率の増減が認められ、基礎代謝が低い者は体脂肪率が増加しやすい傾向がみられた。また、個人差は見られるものの全体的な身体的傾向としては、体脂肪率が高く、下肢の筋力が若干低い傾向であった。骨密度の強度を示すスティフネス値の平均は、78であり、対象者の30%が骨粗鬆症の疑いのある70未満であった。体脂肪率は、前立腺全摘術を受けた患者は、そうでない者に比べて有意に高かったが、放射線治療の有無においては有意差を認めなかった。 3)ホルモン療法を受ける前立腺がん患者の身体的特徴と倦怠感との関係については、体脂肪率、筋肉量、基礎代謝量、水分量などの体組成の値との関連を認めなかった。
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