本年度は、文献検討を主として行った。MEDLINE・CINAHAL・医学中央雑誌およびハンドサーチによって、慢性呼吸器疾患患者のエンド・オブ・ライフ期または終末期またはターミナル期における患者・家族の体験について調査した。調査した結果、慢性閉塞性呼吸器疾患患者に関する文献が大半を占め、その他の慢性呼吸器疾患患者に関する文献はみあたらないか、ごく限られていた。 文献検討から、「医療者が予測する終末期と高齢慢性呼吸器疾患患者が予測する終末期の始まりの時期の違い」が存在していた。次に、慢性呼吸器疾患患者が終末期に向かう体験には、患者は「自身の病気やその進行について不確かな理解」を少なからず有しており、その中で「増える依存と息苦しさへの対処」と「自己保存のもがき」を体験していることが分かった。一方家族は、「病気の本質の知識不足」や「患者への罪悪感」と「ケアできた満足感」を有していることが分かった。 これらの背景には、地域包括的に慢性呼吸器疾患患者を看ていくシステムが不十分であることなど示唆された。 以上の文献検討より、慢性呼吸器疾患患者のエンド・オブ・ライフ・ケアには、患者の息苦しさに対する生命の保証は、この時期の患者の精神状態・QOLに大きく影響しうること、家族は患者との関係において苦悩している実情から、患者・家族および医療者の良好なコミュニケーションはエンド・オブ・ライフ期におけるケアを発展させる可能性があることが示唆された。 来年度は、これらを踏まえて看護師へのエンド・オブ・ライフ・ケアにおける臨床知についてインタビューを行う予定である。
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