本研究は、医療機関の中でもDV被害当事者が来院することが多いといわれる科の1つである救急外来におけるDV被害当事者に対する看護実践モデルを考案することを目的とする。平成21年度は、民間団体・市町村のDV被害当事者に対する支援・相談業務に携わっている支援者にインタビュー調査を行った。支援者11名のインタビュー結果の分析を進めており、現在までに以下のような結果が明らかになった。支援者達はDV被害当事者の揺れ動く気持ちを理解して共感する態度で接し、DV被害当事者が今後の生き方を自分自身で決められるよう自己決定を促す関わりを行っていた。しかし、DV被害当事者の揺れ動く気持ちや行動は、時に支援者達に不信感をいだかせ、支援に対して消極的になりそうな気持ちをもつことが語られた。また、やっとの思いで相談に来ている被害者の気持ちを理解しようとして関わるが、現状では必ずしも被害者の希望に沿うような支援につながらないこともあり、苦悩している支援者がいた。そのため、支援者同士で語り合う場を持ち、支援者同士の情報共有やサポートの必要性があることが示唆された。また、身体的暴力は受診などで表面化しやすいが、精神的暴力は表面化しにくいため、被害が長期間に及ぶことが多く、被害者達の精神面への影響が大きいことが懸念されていた。DV被害を目撃することは子どもへの虐待の一つであり、被害者に子供がいる場合には、特に注意深く関わる必要があり、各関係機関と連携し支援していることが明らかになった。引き続き、今後もインタビュー結果の分析を進めていく。
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