【目的】本研究の目的は、手術後の疼痛緩和の方法と皮膚知覚低下との関連を明らかにすることである。 【方法】対象は、上部・下部消化管および乳腺の手術を実施する患者とした。除外基準は、ペースメーカー装着患者、潰瘍性大腸炎患者、認知機能障害者とした。方法は、術前と術後3日間の両下肢第1足趾裏側の皮膚知覚をpain visionおよびSemmes-Weinstein monofilaments testにより評価した。その他として皮膚温や足関節のMMT等を測定した。属性については診療録よりデータ収集した。 【結果・考察】平成22年1月~平成23年3月までの対象患者は263名(うち15名除外基準適合者、57名調査拒否、7名主治医より中止指示)で、調査へ同意が得られたのは184名であった。調査が実施できたのは177名であった。解析対象者は、術前および術後3日間に調査が遂行できなかった者25名を除外した159名とした。平均年齢は649±11.9歳、性別(男性)57.2%、上部消化管手術71名(44.7%)、下部消化管手術54名(34.0%)、乳腺手術33名(20。8%)であった。1名は上部・下部消化管とも同時手術であった。術後の痔痛緩和方法は、Patient Controlled Analgesia (PCA:患者自己管理鎮痛法)18名(11.3%)、硬膜外麻酔2名(1.3%)、PCAと硬膜外麻酔の併用105名(66.0%)、その他16名(10.1%)であった。monofilaments testで評価された下肢知覚は3.61/0.4gを正常とした場合、手術前の知覚低下者は左右の両脚とも約7割を占めていた。術後3日間の知覚低下者の割合は術前と同程度であった。pain visionで評価された下肢知覚低下者は、術後3日間を通じて、左右両脚とも約3割程度であった。疼痛緩和の方法別による皮膚知覚低下との関連は認められなかった。しかしながら、術前評価におけるmonofilaments testでの下肢知覚低下者は高頻度にみられており、術後も3割程度は術前と比べて知覚が低下することから、早期離床の際の転倒予防や、早期離床困難時には褥瘡予防といった知覚低下による影響を考慮した充分な看護ケアが必要と考えられた。
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