本研究は、生体肝提供を行ったドナーに特異的なQOL(Quality of Life:生活の質)を測定する尺度を開発することを目的としている。本研究により医療のアウトカム評価を鋭敏に行うことが可能となり介入研究や比較研究など臨床研究に活用できる手段(ツール)が得られる。また術後の経時的な変化をとらえやすくなり、ドナー候補者の意思決定や日常生活の調整に役立つ資料を提供できると考えられる。 本年度は面接調査を実施し、生体肝ドナーの術後の生活に対する主観的評価を収集し、そこからQOLの枠組みとなる構成要素を見出した。併せて測定尺度に用いる質問項目を収集した。術後の生体肝ドナー22名に依頼し18名の協力を得、16名を分析対象とした(平成21年4月~10月)。面接内容は了承を得てICレコーダーで録音し逐語録として文字に起こした。それらを熟読して術後の生活評価の視点に関する発言をコード化し帰納的に分類し関連性を検討した。分析とデータ収集は交互に行い(継続比較分析)理論的飽和に達するまでサンプリングを続けた。結果、QOLの構成要素として、「傷」、「ボディイメージの変化」、「消化器症状の不快感と負担」、「臓器喪失感」、「予想外の手術のダメージ」、「費用負担により惹起される不公平感」、「周囲の人々の理解」、「移植の意義満足感」という8つの要素を見出した。また、質問項目としておよそ50項目をプールし調査用紙を設計し素案を完成させた(平成22年1月~2月)。今後、研究者間の検討およびピア・レビューにてQOL構成概念および質問項目の妥当性を検討するとともに大規模調査にて項目の精選と信頼性妥当性の検証にあたる。また、質的に分析した結果およびテーマに関する総説を発表予定である。
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