平成22年4月より新たな4施設に研究協力依頼を行う準備を進めたが、研究の必要性は理解されながらも研究対象者が心肺蘇生の行われた患者の家族ということで施設が研究を進めることに極めて慎重になる現状があった。12月に一施設の協力を得られることになり、平成23年3月に倫理審査委員会に申請を行った。科学的・倫理的に妥当であることが証明され、平成23年4月F病院にて心肺蘇生が行われた患者の家族へ研究依頼を開始した。 本研究における蘇生領域で家族を立ち会わせることに関しては、1980年代以来議論と討論がはじめられていた。その後、蘇生に関するコンセンサスは、国際蘇生連絡協議会(ILCOR)の「心肺蘇生に関わる科学的根拠と治療勧告(CoSTR)」によって示されており、2005年・2010年に改定されたガイドラインにおいても、蘇生中の家族の立ち会いが示唆されていた。海外においては、蘇生中の家族の立ち会いに関する医療従事者や家族の意識を調査した研究は行われているが、我が国においては2005年以前と同様に蘇生中の立ち会いが家族に与える影響に関する研究は、山勢らが医療者を対象とした立ち会いの現状や、医師、看護師、救命士の蘇生中の家族の立ち会いに対する予備的調査と全国調査に限られていた。医療者の60%(医師38%、看護師51%、救急救命士74%)が立ち会いに関して前向きな医療者の意識をもっていることが明らかになっている。一方、家族を対象とした調査は、5名にとどまっているのが現状である。FWRについて、前述したように海外の先行研究はあるものの、海外とは異なる文化的な影響もあると考える。F賑に関する実態調査は、医療者側と患者家族側の双方からのアプローチによる研究が必要で、2005年版の心肺蘇生ガイドラインが広く採用されている医療現場には、これらの研究成果を早期に還元させることが重要である。
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