本研究では、わが国の乳がん治療経験者の性生活に対する戸惑いと、看護職者にどのような支援を期待しているのかを明らかにすることを研究目的としている。 今年度は、まず、研究をまとめるにあたって、不足文献を収集した。そして、乳がん治療を経験した20歳~60歳代の女性で、同意が得られた17名のインタビュー内容を逐語録に起こし、質的帰納的に分析を行った。分析は、分析結果の偏りを避け、データの信頼性を確保するために、分析過程で乳がん看護の研究者や乳がん治療の専門職にスーパーバイズを受けながら行った。そして、分析の結果、乳がん治療経験者の性生活に対する戸惑いは、5つの《カテゴリー》で形成された。乳がん治療経験者は、パートナーとの性生活において、《治療によるお互いの性反応の低下》に戸惑いを感じていた。自分の性反応の低下は、《お互いの気持ちを察するが、身体的苦痛があり性生活がしっくりいかない》戸惑いにも影響していた。また手術療法では、たとえ温存療法であっても、《手術の痕に敏感になり性生活に踏み込めない》状況にあった。乳がん治療後は、大切な存在としてパートナーを認識する一方で、《治療を受けた自分を理解して、性交をしてくれない》ことに戸惑いを感じていた。このように乳がん治療経験者は、治療後の性生活において、様々な戸惑いを体験するが、「性生活については他者に聞きたくても聞けない」内容であり、〈性交再開時期が不明確〉など、《性相談をする環境がなく性問題の表出に躊躇する》ことにも戸惑っていた。今年度の結果から、看護者は、治療がどのように性的合併症を引き起こすのかを理解した上で、乳がん治療経験者とそのパートナーのもともとの性生活を加味しながら、個別な性問題に関わっていく必要があることが示唆された。
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