深部静脈血栓症予防用具を使用した場合に褥瘡を起こした症例について検討するために、医中誌を用いて過去26年間(1983年~2009年)の文献検索を実施した。深部静脈血栓症予防用具によるスキントラブルに関する報告は20件、深部静脈血栓症予防用具による深部静脈血栓症予防効果に関する研究は17件であった。2004年以降、深部静脈血栓症予防具普及に伴い、スキントラブルの報告が見られるようになってきた。スキントラブルの原因としては、摩擦、過圧迫、不適切な装着方法、看護師のケア不足、浮腫などがあり、深部静脈血栓症予防用具自体に起因するもの、看護師のケアに起因するもの、患者に起因するものがあることが分かった。 これらの結果をもとに、臨床での深部静脈血栓症予防用具の装着方法や褥瘡、スキントラブルの発生状況、要因を把握するために実態調査を実施した。対象は、病床数が200床以上で外科病棟を有する東北地方の151施設の外科病棟の看護師長とした。回収率は約5割であった。深部静脈血栓症予防用具の使用としては、弾性ストッキング(ハイソックス)の単独使用、次いで間欠的空気圧迫装置と弾性ストッキングの併用が多かった。肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドラインにおいては、間欠的空気圧迫装置と弾性ストッキングの併用を奨める記載ないが、実態調査より約6割が単独使用より深部静脈血栓症予防に効果的であることから併用。また、深部静脈血栓症予防用具の使用が原因で装着部位に褥瘡もしくは皮膚障害が発生した経験があるは56.4%であった。深部静脈血栓症予防用具を各々単独で使用した場合と、弾性ストッキングと間欠的空気圧迫装置を併用した場合のいずれも褥瘡もしくは皮膚障害の発生が見られていた。そして、褥瘡もしくは皮膚障害が発生した要因は、深部静脈血栓症予防用具の局所の圧迫や摩擦、シワやたるみ、ねじれ等、看護師の観察不足が多いことが明らかとなった。
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