今年度における研究の目的は、治療期にある肺がん患者に適応した気持ちの面から捉えた呼吸困難アルゴリズムの試案を作成し、その信頼性・妥当性について検討することとアルゴリズム活用による有効性を検討することである。研究方法は、第1段階における研究成果として明らかとなったがん治療過程にある肺がん患者が呼吸困難を抱えることにより生じる行動変化や情緒的反応の体験として示された「呼吸困難を抱える治療期進行肺がん患者の体験」を表す6つの概念(課せられた活動困難性、自己の孤立化、自己概念の低下、生きる支えとなるものの喪失など)の内容をアルゴリズムの構成要素として成分化した。さらに、作成した概念構成に基づき構成要素の順序性を決定し、呼吸困難を抱えることに伴い生じる気持ちの変杷と看護介入の方向性を示すアルゴリズムの試案を作成した。第2段階として、作成したアルゴリズムの試案を3名の対象者に適応し呼吸困難の判定を行った。なお試案の適応にあたり、自由意思による研究参加の保障や個人情報の保護について対象者に説明する等の倫理的配慮を行った。看護師2名が各々3名の患者に対しアルゴリズムの試案を用いて呼吸困難の判定を行った結果、2名の看護師が同じ呼吸困難レベルを選択した。また、対象患者3名の判定結果をふせて直接、患者に呼吸困難の体験内容についてインタビューを実施した結果、アルゴリズムの判定結果とインタビュー内容の主題に共通性がみられた。これらの結果は、アルゴリズムの信頼性・妥当性の裏付けの一助となると考える。さうに、アルゴリズムの活用後に案施した看護師へのインタビュー結果から、アルゴリズムを活用することで看護介入の方向性が明確にできる、患者との一貫した関わりにつながるといったアルゴリズム活用の有効性が示唆された。以上を踏まえ、アルゴリズムの臨床運用に向け、さらなる調査・検証を続けて実施する必要があると考える。
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