本研究の目的は、がん看護に従事する看護師のピアサポートの実態と看護師チームのピアサポーズを把握し、ピアサポートプログラムの要素の抽出、およびプログラム試案を作成することである。今年度は、がん看護に従事する看護師が、看護チームのピアに希望するあるいは期待するサポート内容や課題などのピアサポートニーズを把握するために、がん専門病院に勤務する看護師を対象にフォーカスグループインタビューの手法を用いて検討した。インタビュー内容から、がん看護に従事する看護師は、肯定的なピアサポートを実現する前提として、業務の複雑化や煩雑化およびマンパワー不足による負担軽減に向けた「看護師の心と時間の余裕を支える支援」を求めていた。また看護師は日常のがん看護実践を通して、ピアから学ぼうとする姿勢やピアを信じる姿勢、ピアとともに課題を向き合う姿勢など「看護師のピアサポートを利用する力の強化」が必要であると感じていた。さらに、がん看護を実践する中で、看護という共通の話題による意識的なコミュニケーションの充実と、目標や課題をチームで成し遂げ、共に看護を楽しむという体験の蓄積など「ピア同士がともにきずなを深める体験の共有」が挙げられた。そして看護チームのサポートが円滑に展開するためには、チームの中で自ら率先して支持的なピアサポートを実践する個人あるいは小集団の「支持的なピアサポートを実践するロールモデルの存在」が不可欠であると感じていることが明らかになった。 本研究を通して、がん看護に従事する看護師のピアサポートを充実させるためには、看護師が相互に支えあえる環境の整備とともに、個々の看護師がチームメンバーであるという自覚を高め、ピアによる支援を保証し、肯定的なサポートの具体的内容の例示などを含む支援教育の充実と、ピアサポートを牽引するサポートリーダーの育成などのピアサポートプログラムの実践が必要であることが示唆された。
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