本研究の目的は,慢性肝疾患から肝細胞がんに移行していく患者を対象にした患者教育・支援システムの構築を行うこととその効果の検証とした。患者教育・支援システムの具現化として,肝臓病相談支援室と命名した個別の教育・相談が行える場を設置し,病期に合わせた教育用パンフレットを用いて,患者教育を行った。肝臓病相談支援室の効果検証の為に,教育の前と教育を行った1ヶ月後と2ヶ月後に面接とアンケート調査を実施した。教育中の患者の様子については,承諾のもとで録音しデータ化し,分析対象とした。本システムを利用した患者は 36名であった。2回目の追跡調査が行えた対象者は22名であった。アンケート調査は,肝臓病教育を受けた後,「肝臓病の機能」「検査データ」など指導した内容に関する関心や理解がどの程度変化をしたかについて尋ねた。選択肢は,「とても変化した」から「まったく変化なし」の4段階に加え,対象者の年齢や理解度なども考慮し,「わからない」も加えた5項目で構成した。その結果,「とても変化した」「まあまあ変化した」と回答した対象者は,「適度な運動」以外の項目で半数以上を示しており,概ね効果が見られたと判断できる。面接調査では,「病気について話せる場があってよかった」「生活に即した話を聞けてよかった」「医師に聞きそびれたことを確認できた」「病気のイメージがついた」など効果的であったことを示す反応が見られた反面,「診察が終わってからのこの時間はきつい」など,肝臓病相談支援室の効果的な運営について課題があることも明らかになった。面接とアンケート調査の分析をした結果,教育体制に課題はあるものの,対象者は教育内容に意義を感じていることが明らかになった。
|