本研究では虚血性心疾患患者の「社会的孤立」に着目し、その構成要素を明らかにするとともに、関連要因を含めた構造モデルの構築を目指している。21年度は社会的孤立の実態を把握し、構成要素を確認するため、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)の治療を継続している患者6名(男性5名、女性1名)を対象に「病気になってから自覚する生活状況の変化」について半構成的インタビューを行った。 「病気になってからの社会活動や人間関係の変化」として、発症当時に仕事を有していた者は「仕事内容を変更する、変更させられる」といった職業上の役割変化を体験していた。また、趣味や近所づきあいについては「変化はない」としながらも、「発作が起こらないように」「無理はしないように」という考えや不安が念頭にあり、実際的な活動範囲の縮小には至らないが、心理的な(見えない)制約・規制として常に存在していることが明らかになった。 「変化に伴う気分・感情の変化」としては「病気だからしょうがない」とあきらめを示す一方で、発症まで築きあげてきた社会的役割や責任を全うすることが出来ない「焦り」や「不本意」という感情も伴っていた。変化の受け入れには「職場の人間関係」や「家族の理解」があり、ソーシャルサポートの重要性が示唆された。 次年度はさらに対象数を増やして、社会的孤立の構成要素および関連要因の整理を進めていくとともに社会的孤立・先行要因・心理反応を加えた概念枠組みを構築し、質問紙原案の作成を行う予定である。
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