【目的】HIV感染症は、長期にわたり健康管理や薬物療法の継続が必要な慢性感染症であり、患者の受診行動は治療に大きく影響する因子である。先行研究では、患者への生活支援が受診継続に大いに貢献するという結果が導き出されている。しかし、患者への生活支援を継続するためには、ヘルスケアシステムが有機的に機能していることが前提であるため、その評価と改善にはヘルスケアシステムを簡便に測定でき、かつ改善を要する点を把握できる調査票が必要である。【方法】慢性疾患患者用に開発されたPACIC(Patient Assessment Chronic Illness Care)の作成者に連絡をし、日本語版作成の許可を得た。その後、和訳と逆翻訳を実施し、原作者の最終的な了解が得られた段階で、翻訳の質と表現の適切さを評価するため予備調査を実施した。調査方法は、A病院に通院して半年以上経過しているHIV/AIDS患者を対象とし、回答時間と回答しにくかった項目などについて聞き取りを行い、調査票の問題点を抽出した。 【結果】調査協力者は22名であり、平均年齢36.5歳、平均通院歴60.2ヵ月、抗HIV療法有り21名、平均CD4陽性細胞数384.7/μ1、他の病気有り3名などの患者背景であった。調査票はA4用紙3枚であり、回答時間は平均8分であった。また、回答者が回答しにくかった質問は、「目標設定」「問題解決」のカテゴリーで、初診や治療開始前後の状況とあわせて回答していたことや、'人生''具体的な目標'という言葉に引っかかる傾向がみられた。【考察】本研究ではPACIC日本語版作成の第一段階として、順翻訳、逆翻訳、予備調査を実施し、調査票の問題点を検討した。本調査票は、過去半年間に受けた治療やケアについて質問をしているが、回答者が答えにくかった原因として、他の慢性疾患と比べ、初診や治療開始時期に医療者が集中して生活支援を実施しているためと推測された。今後、修正した調査票を使用し、対象者の時期を検討しながら信頼性・妥当性を検証する予定である。(798/800文字)
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