【目的】HIV感染症は、長期にわたり健康管理や薬物療法が必要な慢性感染症であり、患者の受診行動は治療に大きく影響する因子である。そのため、患者への生活支援こそが受診行動を維持・促進することが先行研究より多数導き出されている。しかし、患者への生活支援を継続するためには、患者が必要とする保健医療福祉が有機的に機能していることが前提であり、その評価と改善には、現行の保健医療福祉を簡便に測定でき、かつ改善を要する点を把握できる調査票が必要である。【方法】昨年度は、慢性疾患患者が必要とする保健医療福祉測定用に開発されたPACIC(Patient Assessment Chronic Illness Care)のバックトランスレーション後に、和訳としての妥当性を図るため予備調査を実施した。予備調査で妥当性の検討が図れたため、今年度はPACIC調査票を用いて本調査を実施した。【結果】調査対象者は、2006年4月から2009年4月にA病院初診であったHIV/AIDS患者307名を対象とし半年間の介入調査を実施し、PACICの構成モデルである慢性疾患モデルの検討もあわせて行った。まず、これまでに協力医療機関に関わっている保健医療福祉を測定するために第1回目のPACIC調査を実施した。その結果、院内の自己管理に関する取り組みの点数が低かったため、半年間の介入内容は自己管理を含めた生活相談を介入群すべてに実施し、介入前後の違いを測定した。なお、母集団307名のうち調査協力者は159名(51.8%)であり、介入前と後の保健医療福祉の評価として、PACICの点数以外に、患者の受診中断者数、患者満足度、通院負担感、HIV-RNA量などを、患者アンケートと診療録によりデータを収集した。【考察】研究期間2年間を通じて、PACIC調査票日本語版の開発とPACICの構成モデルである慢性疾患モデルを検討する調査を実施した。今後、これまで収集したデータを分析し、患者が必要とする保健医療福祉を簡便に測定でき、かつ改善すべき点を的確に把握し、質の良い保健医療福祉を構築していく研究の継続が必要であると考える。(799/800文字)
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