研究概要 |
1. 授乳前・中・後の褥婦の自律神経機能の評価指標の検討 自律神経機能の評価については表面皮膚温、血流、心電図等が挙げられたが、文献や協力者への負担を考慮し、心電図波形を指標とした。これを用いて、本年度は健常女性および褥婦にプレテストを行った。心電図計測は、本研究では授乳時を想定しているため、それを妨げないよう胸部以外の3点誘導法にて行った。第一段階として健常女性を対象に安静時と活動時の基本的な測定をその行い違いを確認した。健常女性のプレテストにて測定部位やデータ内容を確認後、褥婦を対象に産褥1日目と5日目の授乳前、授乳中、授乳後の心電図計測を行った。産褥1日目の褥婦の授乳前・中・後のLFの変化は、授乳前150.96、授乳中224.37、授乳後324.68であった。また、HFでは授乳前371.66、授乳中724.54、授乳後566,49、さらに、LH/HF比は授乳前0.41、授乳中0.31、授乳後0.57であった。また、産褥5日目の褥婦の授乳前・中・後のLFの変化は、授乳前198.08、授乳中247.66、授乳後352.10であった。また、HFでは授乳前75.51、授乳中150,75、授乳後49.97、さらに、LH/HF比は授乳前2.62、授乳中1.64、授乳後7.05であった。また、助産師による乳房マッサージ直後(産褥5日目)では、LF145.85、HF111.71、LH/HF比1.31であった。産褥1および5日目共に授乳中はその前後に比べ副交感神経優位であることが示唆されたが、その前後の関係や、乳房マッサージによる変化の検討についてはさらに事例を重ねて検討する必要がある。その後、本調査を行っていく。 2. 乳房緊満(硬さ)の測定器の開発について 本研究では、乳汁分泌状態を判断する情報の一つに乳房の緊満を挙げ、専門家を交え緊満度の数値化を試みたが、対象が硬物ではなく柔らかい人体であること、倫理的配慮、産業財産権、諸経費等の課題から測定機器の開発には至らなかった。本研究の主旨からすれば従来の乳房緊満に対する観察法で対応し得ることが再検討された。
|