本研究では褥婦の授乳および乳房マッサージによる変化を心拍変動、リラックス尺度、気分調査から、生理・心理特性を明らかにした。対象はB施設の同意が得られた褥婦5名である。調査は全て褥婦の個室で行った。授乳前、授乳中、授乳後の調査スケジュールは、対象者の最終授乳時間や次回授乳時間に関する情報を得て立案した。調査内容は、授乳前後はリラックス尺度、MOODによる質問紙調査および心電図測定を、授乳中、乳房マッサージ中は心電図測定のみ行った。心電図測定時期は、授乳前は前回授乳後の30分から次回授乳開始の直前まで、授乳後は授乳終了直後とし、それぞれ10分間計測した。心電図測定時の姿勢は、授乳前後の測定は、仰臥位姿勢で閉眼とし、授乳中は座位で測定した。なお、授乳中の測定は授乳行為を妨げないよう注意した。乳房マッサージは、同一助産師が行い、仰臥位で行われた。また、調査は産褥早期である産褥1日目と退院間近の産褥4日目頃に2回行った。その結果、交感神経を反映するLF/HFは、授乳中や乳房マッサージ中は安静時と比較し、身体活動レベルは上がり、肉体的なストレスが加わるため、授乳中(平均3.6±3.2)や乳房マッサージ中(平均2.1±0.9)のLF/HFは授乳前(平均1.1±0.5)よりも有意に高かった(p<0.01)が、軽微なストレスであることが分かった。また、副交感神経を反映するHFは、授乳中(平均354.9±482.4ms^2)や乳房マッサージ中(平均282.3±214.1ms^2)では授乳前(平均255.8±264.4ms^2)に比べ有意に高く(p<0.01)、肉体的なストレスは加わるものの、同時に授乳や乳房マッサージによってリラックスした状態を作り出そうと副交感神経が活性化されていることがわかった。そのうち3事例では、授乳後のHFが高まるだけでなく、LF/HFの低下がみられ、自律神経系機能は副交感神経が優位であることが示された。
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