平成22年度は、前年度に引き続き、研究者の先行研究で得られた質的データおよび分析結果から、第2子を迎える過渡期にある母親の独自性を示し、2児の親としての役割受容状態を構成する要素を抽出することを目指して、以下の課題に取り組んだ。 先行研究である「2児の親となること-第2子妊娠から出産後における親役割受容プロセスの相違-」の質的データを吟味するため、再度逐語録を整理した。その結果、母親は妊娠期から産後にかけて、第2子よりも第1子を気にかける言動が多く見られた。また母親は父親に比べ、出産前後の準備や第1子への心配および対応の予測が早くから見られ、それらが父親よりも強い傾向があった。父親は、出産後に実際の体験を通して、生活の変化や2児を同時に育児することの大変さを実感している様子が伺えた。また、父親の協力や理解の程度により、母親の妊娠中や産後の育児の負担感が大きく異なっていた。 平行して、経産婦に関する国内外の文献検討を行った。経産婦に関する国内の文献は初産婦と比較したものが多く、経産婦独自の特徴を表す研究、また研究者の目指している尺度に関する先行研究は見当たらなかった。国外における経産婦に関する研究は、心理面に焦点をあてた質的研究により、経産婦は初産婦とは異なるサポートが必要であることが示唆されていた。 次年度は、引き続き第2子を迎える親の役割受容に関する要因に焦点をあて質的データの分析を進め、また、2児の親に関する国内外の文献検討を行うことで、本研究で用いる2児の母親の独自性および役割受容状態の概念やその構成要素について検討し、尺度開発を進めていく予定である。
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