本研究の目的は、母親個人の母乳中の脂質測定に基づいた搾乳指導法を実施することによって、早産児の発育上のニーズに適した母乳育児が実施できることである。 平成22年度は、母乳中の脂質測定に基づく搾乳指導法を考案するために、平成21年度に実施した搾乳量の増加および搾乳時間の経過に伴うクリマトクリット値の変化に関する調査の分析を行い、成果を報告した。 搾乳時間の経過に伴うクリマトクリット値の変化については、2nd International Nursing Research Conferenceにて結果を発表する予定である(Variations in creamatocrit during expressing breast milk from mothers of preterm infants)。妊娠22~36週で出産した18名の母親に対し、産後7~64日の間に30回の搾乳により母乳を採取した。クラスター分析の結果、搾乳時間の経過に伴うクリマトクリット値の変化としては、4つのパターンが認められた。 搾乳量の増加に伴うクリマトクリット値の変化については、第25回日本母乳哺育学会学術集会にて結果を発表した(前乳と後乳を区分する搾乳量の検討)。妊娠22~36週で出産した21名の母親に対し、産後7~63日の間に35回の搾乳により母乳を採取した。総搾乳量は平均52.4gであり、分析は総搾乳量50g未満と50g以上の2群にわけて行った。クラスター分析の結果、総搾乳量50g未満の場合、搾乳量15g以下と15.1g以上に2分割され、総搾乳量50g以上の場合、搾乳量30g以下と30.1g以上に2分割された。以上より、前乳と後乳を区分する搾乳量はこれまでの参考値と類似していたが、総搾乳量50g未満の場合15g、総搾乳量50g以上の場合30gであり、母親の搾乳量に応じて前乳と後乳を区分する必要があると考えられた。
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