平成19・20年度科学研究費補助金(若手研究B)課題名『遺伝教育プログラムを応用したダウン症児きょうだいへの支援』(課題番号19791796)の結果をふまえ、平成21年度に家族会で実施した学習会の評価をまとめ、遺伝看護学会第9回学術大会で発表した。また、きょうだいに対してどのような関わりが考えられるかについて、これまでの研究結果をもとに、平成22年度に家族の会と共同企画し、再度学習会を開催した、主に小学校低学年から中学生に対して、どのような言葉を用いて説明するべきか、何を伝えるべきかについて意見交換を行った。家族会会員90名の参加があった。 昨年度に実施したきょうだいの語りを中心とした学習会で、きょうだいへ説明するための材料である"ダウン症者がどのように老いていくのか"について情報がないこと、今後、ダウン症者の生活を支えるためにどのような準備が必要かを考えるためにも、「ダウン症者の自然歴」を知りたいという意見があった。これを基に、アンケート調査を実施した。平成22年度は、この調査の全般的社会適応状況と年齢、生活の場との関連についてデータ分析を行い、第55回日本人類遺伝学会で発表した。年齢とともに社会適応能力は低下していくが、30代を境に低下していること、施設入居者と自宅生活者の比較では、言語能力、ADL能力について施設入居者が有意に低下していることが分かった。一方、移動能力は、50代前半まで比較的よく保たれていた。 平成23年度は22年度学会発表分について論文を作成することと、自然歴に関して、外見的老化徴候と精神的変化に関する分析を継続して行い、日本人類遺伝学会で報告する予定である。
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