わが国では移植医療は、脳死下あるいは心停止後のドナーからの臓器提供は少なく生体ドナーからの臓器提供に大きく依存している。しかし、臓器提供後のドナー家族に関する研究を概観すると、ドナー家族は、大切な家族の突然の死という耐え難い状況にありながら、臓器提供の決断を行なわなければならず、その体験は複雑であることが推測されたが、ドナー家族の臓器提供の体験全体を明らかにしたものは無かった。 これらの背景から、本研究の目的を、わが国で脳死下あるいは心停止後に臓器提供を行なったドナー家族の、ドナーが死に直面し、臓器提供にいたるまでの体験と、臓器提供後数年までの体験を明らかにすることとした。わが国ではドナー家族の個人情報の保護されているため、ドナー家族への接触が困難であったため、21年度に引き続き、日本移植者協議会へ研究協力依頼を行った。日本移植者協議会にはドナー家族への研究協力の説明書と返信用葉書を手渡してもらい、研究協力の意思がドナー家族にある場合、返信用葉書を返送してもらった。本年度は9名のドナー家族から研究協力を得て、一人に対して約1時間半程度の半構成的インタビュー調査を、プライバシーが保護できる個室で実施した。22年度までの対象者は16名(脳死下提供4名、心停止後提供12名)であった。得られたインタビューデータを逐語録に起こし、グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて、質的帰納的に分析を実施した。得られた結果は、第31回日本看護科学学会学術集会にて口演発表した。
|