研究概要 |
本研究の目的は、人工妊娠中絶術(以下、中絶とする)を受けた女性の中絶前後の看護ケアに対するニーズを明らかにし、具体的な看護介入を検討することである。研究初年の本年度は、昨年度の予備調査(勝又里織他:人工妊娠中絶術を受ける女性の看護の実態と看護者への期待)を踏まえ、独自の質問紙を作成した。 予備調査は、面接法にて6名に実施した。しかし、その結果から質問紙を作成するにはデータが不足していると判断したため、平成21年度は、さらに、中絶後の女性2名を追加して面接をするところから開始した。最終的に、8名の中絶後の女性のデータを分析し、中絶前には「温かい言葉や気遣いの言葉をかける」「他の患者さんと同じように接する」等【罪悪感を緩和する看護】、中絶当日は「自分の選択に対して支持的な態度を示す」「何事もなかったかのように淡々と接する」等【自己決定を支える看護】、中絶後1週間は「女性の身体のことや避妊に関する相談にのる」等【これからの自分を支える看護】、「パートナーに対しても、手術に関する説明や配慮をする」等【妊娠や中絶がパートナーと自分の二人に起こった出来5事であると認識できる看護】を求めていることが明らかになり、18の質問項目が挙げられた。 中絶を受ける女性の看護に関しては、身体状態や心理状態から、その必要性を報告するものは国内外に多く見られるが、ケアに対するニーズを直接調査したものは非常に少ない。日本においては、岸田が1999年に実施した調査(岸田泰子:若年者の人工妊娠中絶前後に必要とされる援助に関する一考察.思春期学20(2)pp266-272,2002)があるが、ニーズについて具体的な報告はされていない。今回、実際に中絶したの女性に行った面接結果から質問紙を作成しており、質問項目に中絶後の女性たちの言葉や表現を採用することで、看護ケアに対するより具体的なニーズ反映することが可能となった。今後は、作成した質問紙を用いて調査することで、多くの中絶後の女性の看護ケアに対するニーズと具体的な看護介入を検討する。
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