研究概要 |
本研究では,アメリカで開発されたChildhood Atopic Dermatitis Impact Scale(CADIS)の日本版を開発すること,その結果を分析することにより,アトピー性皮膚炎の子どもの家族へのよりよい看護介入または育児支援のための示唆を得ることを目的としている。今年度は,原版の翻訳過程を経て日本語版CADISの作成に取り組んだ。その後,表面妥当性の確認を行い,日本の文化を反映させるべく,実際にアトピー性皮膚炎の子どもをもつ母親5名にインタビューを行った。 表面妥当性の確認の結果,「Social life(社会生活)」の解釈の仕方にばらつきが認められた。そこで,訳語の変更はせずに,「社会生活をどのように捉えたか」自由記述で質問を加えることで,何を意図して回答したかを明らかにした。そして,その内容が家族の生活に影響を与えるものの中で,気になっていることや影響の大きいものなのではないかと考えた。その他,表現を身近なものに修正した。 インタビューでは,原版に無い日本独自の新たな項目の抽出を行った。その結果,Parents domainでは,(1)この皮膚の状態のために,食事内容について,症状悪化させないよう気をつけている。(2)この皮膚の状態のために,子どもの環境について,症状悪化させないよう気をつけている。(3)毎日子どものアトピー性皮膚炎のケアを行う今の生活に慣れたと感じる。(4)家族ぐるみでアトピー性皮膚炎のケアに取り組んでいると感じる。(5)長期的な見通しを持ってケアに取り組むことができる。(6)完璧な管理ができない自分を受け入れることができる。という6項目を加えた。Children Domainでは,(1)お子様自身が,アトピー性皮膚炎の症状悪化を回避するような行動をとる姿勢がみられる。 (2)この皮膚の状態のために,お子様のきょうだい関係が悪化した。という2項目を加えた。 以上の過程を経て,CADIS日本版(試案)とした。CADIS日本版(試案)は,一次調査を経て,今後全国調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CADIS日本版(試案)は,一次調査として愛知県内の小児アレルギー専門医に依頼し,110部配付を行った。現在対象者からの返信を待っている段階で,概ね順調に回収ができている。ここまでで調査は一旦中断するが,その後の全国調査に向けて,日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会に,当学会に所属する小児アレルギー専門医に協力依頼してもらえるよう,依頼してある。復帰後,全国調査の準備ができ次第,手続きを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,一次調査の結果を集計し,記述統計,信頼性の検証(信頼性係数の算出),妥当性の検証(因子分析,併存妥当性・弁別妥当性の確認)を行う。その後,因子負荷量の小さいもの(原則的には0.4以下を想定する),天井効果,フロア効果は除き,質問項目等の見直し・修正を行う。 この過程を経て,二次調査は全国調査で行う予定である。データ解析は,記述統計,対象属性,重症度,合併症と尺度との関連,信頼性の検証(安定性の確認,内的整合性の確認)妥当性の検証(因子分析,併存妥当性・弁別妥当性の確認)を実施し,「CADIS日本版」の作成を目指す。
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