H23年度は、これまでの結果をもとに、がん患児のClostridium difficile感染症(CDI)予防のための環境整備や排泄ケア方法の検討を行った。その主な内容は、以下の通りである。 がん患児や家族に対するCDI予防のための環境の清浄化として、共有スペースと専有スペースに分けて考えることが重要である。 共有スペースにおいては、清掃業者や医療従事者による日常的に実施する一般的な清掃に加え、C. difficileの減数を前提にした療養環境、特に高頻度接触面やベッド周辺の床の清拭や、患児の退院時やベッド移動時には、プライバシーカーテンの洗濯や日常清掃では使用し難い、次亜塩素酸ナトリウムなどで十分な換気をしながら使用し、徹底した清掃を行うことも重要である。 また、ベッド周辺等の専有スペースにおいては、家族に対し、清掃業者や看護師などの医療従事者が実施できない持ち込み物品の清拭をすることを指導することが重要である。さらに専有スペース内に設置されているポータブルトイレやその周辺の床は、患児や家族のプライバシーを尊重し、清掃業者や医療従事者による適切な清掃が重要である。 さらに、小児の発達段階や付き添い家族の状況を考慮した排泄ケアや手指衛生の方法について、C. difficileの特徴を踏まえた指導が重要である。特に、手指衛生は、速乾性手指消毒薬の使用ではなく、石けんと流水による手指衛生が必要である。以上のような、患児や家族が実施するべき感染予防策を含めた、がん患児の背景を考慮した教育プログラムの構築および啓蒙が必要である。
|