腰骨盤痛は妊婦が訴えるマイナートラブルの中でも頻度が高い。腰痛と骨盤痛は日常生活活動へ影響することから、腰痛だけでなく骨盤痛にも着目する必要がある。骨盤痛を判断するには自覚症状だけでなく客観的評価の必要性が示唆され、客観的評価には骨盤痛誘発テスト(Posterior Pelvic Pain Provocation Test 以下P4テスト)、骨盤機能テスト(Active straight leg raise test 以下ASLR)および恥骨結合部の圧迫(以下恥骨部の圧迫)などがある。これらの評価は簡便で時間かからず、妊婦に副作用なく実施でき、負担はほとんどない。しかし骨盤痛の客観的評価は国内ではほとんどされていないため、実施にあたり信頼性の検証が必要である。そこで、P4テスト、ASLR、および恥骨部の圧迫の3つの客観的評価についてパイロットスタディを実施し、信頼性を検討した。信頼性は同一測定者が1週間後に再テストを実施し測定者内信頼係数を、1回目の測定者とは別の測定者が1週間後に再テストを実施し、湖定者間信頼係数をカッパ係数で算出した。 測定者内信頼性は26人から結果が得られ、P4テスト、ASLR、および恥骨部の圧迫のカッパ係数はそれぞれ0.755(p=0.000)、0.609(p=0.002)、0.742(p=0.000)で中程度の一致率であった。測定者間信頼性は17人の結果から、それぞれ0.549(p=0.022)、0.850(p=0.000)、-0.085(p=0.707)とASLRの再現性は高かったものの、P4テストは中程度であった。恥骨部の圧迫は測定者間の再現性を認めなかった。これは測定者によって負荷のかけ方が異なったことが要因だと考える。P4テストやASLRは測定者内および測定者間信頼係数が中程度以上を認めたため、今後大規模調査で信頼性を検討する必要がある。
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