研究概要 |
小児がん患児の父親にインタビュー調査を実施し、子どもががんであると診断され、長い闘病生活を送る中での父親の体験を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて明らかにした。小児がん患児の父親が困難な状況を受け止めていくプロセスは,《成長を実感していく》《医師からの安心材料》《必死の対処行動》《元気づけ》の4つのカテゴリーと3つのサブカテゴリー,16の概念で構成された。初発入院である小児がん患児の父親は,子どもの体調不良から診断がつくまでの期間【病名確定までの眠れない日々】を体験し,がんであると診断が確定することで,【覚悟せざるを得ない死】【受け入れがたい現実】である<子どもを亡くす恐怖>を感じていた。この時期,父親は本やインターネットを使って,病気や治療に関しての【命がけの情報収集】を行っていた。父親は病気や治療に関して情報収集した後,治療に関しては医師にお任せするしかないという【医師に託す】という対処行動をとっていた。また,医師より病気に対する治療法があり,治る確率が高いという【高治癒率提示に一安心】していた。父親は,<子どもを亡くす恐怖>を体験しながら,辛い現実を前向きに捉えようと努力する【プラス思考に切り替える努力】や何とか現状を乗り切るために【明るく振る舞う】や家族や周囲の人に弱いところを見せず,父親自身がしっかりしようとする【気丈さを演じる】という<持ちこたえる努力>をしていた。また,同時に子どもが抗がん剤の治療をする中で起こってくる脱毛や嘔吐などの副作用を見ることで【副作用からの病名受け入れ】を体験していた。治療を継続していく中で,医師からの【治療順調の保証】によって父親は大きな安心感を得ていた。【職場同僚の理解・励まし】【あどけないきょうだい児】【頑張る病児からのエール】という支えによって,父親は【家族の絆の深まり】【当たり前の有難さ】【優しさ・強さを身につける】という<人間的成長の実感>を体験していた。
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