研究概要 |
1.目的:本研究は,生活習慣病予防の主たる対象である地域住民に焦点を当て,身体活動の実践が主観的な睡眠の質と関連するという仮説のもと運動習慣改善を意図した介入プロジェクト受講による主観的睡眠評価および健康関連QOLの縦断的変化を検討することである。平成23年度はこの目的に従って,成人健診および運動・栄養に関する介入活動より,以下の各種指標について調査,測定を行った。なお,本研究は岩木健康増進プロジェクト(弘前大学医学部社会医学講座)と連携のもと実施した。2.成人健診(1)方法・対象:青森県弘前市岩木地区に在住する住民で,岩木健康増進プロジェクト成人健診に参加した一般成人約1000名である。(2)調査期間:平成23年5月下旬の10日間とした。(3)測定項目:(1)アンケートによる生活習慣等の聞き取り調査(2)身体組成値,(3)血液生化学検査,(4)各種身体機能検査である。本調査では,対象者を男女別に分類し,若年群,中年群,高齢群に区分した。(4)結果:男女とも高齢群では睡眠時間が長く,若年群・中年群では睡眠の質を悪いと評価する者が多かった。睡眠障害と健康関連QOLにおいて,身体的健康度が良い者より悪い者では,睡眠障害のオッズ比が高かった。これは,精神的健康度においても同様の傾向を認めた,睡眠障害はQOLの低下に影響することが推測された。3.運動・栄養に関する介入活動(1)方法・対象:岩木地区に在住する住民約100名を対象とした。(2)実施期間:1回/週(2時間/1回)の健康実践教室を6カ月間とした。(3)測定項目:2.成人健診の内容に準じ教室前後の変化を検討した。(4)結果:運動教室後では運動習慣は増加,また,抑うつ傾向,身体組成値,脂質代謝は改善したが,喫煙・飲酒習慣,睡眠習慣,QOLでの変化は見られなかった。本研究の結果から、低頻度の運動介入は心身に良好な影響を及ぼすことが示唆された。これらが具体的な生活習慣の改善,QOLの向上につながるよう,今後は影響因子を多角的に検討する必要がある。
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